三重県伊賀市を中心に作られている伊賀焼は、その耐火性の高さから土鍋などに適した焼きものです。
本記事では、自然な土の風合いと力強さが特徴の伊賀焼に焦点を当て、その魅力をお伝えします。
おすすめ・人気の窯元もご紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
弥のまる 高橋侑也
20歳の頃、賛否両論本店就職へ就職し27歳で料理長に就任。
10年修行をしたら独立したいという思いから30歳で退社し、2021年12月に「弥のまる」をオープン。
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お客様との距離感を大切にし、リーズナブルな価格でしっかりとした料理を出すことで満足してもらえるお店づくりを心がけている。
伊賀焼とは?
伊賀焼は、三重県伊勢市を中心に作られている焼きものです。
伊賀周辺の土は非常に優れた耐火性を持っており、土鍋や耐熱食器などに適していることが知られています。
素朴さや力強さを特徴とする作品が多く、高温で焼くことによる焦げや緑色のビードロなど、独特の色味や風合いが感じられる焼きものです。
また、意識的に歪みや凹凸(おうとつ)を加えることで造形的な美しさが感じられるのも魅力でしょう。
伊賀に耳あり、信楽に耳なし
信楽(しがらき)焼と伊賀焼は、同じ古琵琶湖層の陶土を使っているため、生産が始まった当初は、見た目がよく似ていることから区別がつきにくかったようです。
しかし、室町時代になると産地ごとの形や装飾の違いが表れ、両者を比較する目印が出てきます。
この頃の伊賀焼は「古伊賀焼」と呼ばれており、水指しをはじめ「耳」と呼ばれる取っ手がつけられているものが多く見られました。
一方、信楽焼には耳がなかったことから、「伊賀に耳あり、信楽に耳なし」という言葉が生まれ、伊賀焼と信楽焼の見分けがつくようになりました。
耳付きの古伊賀の中でも、とりわけ国の重要指定文化財「伊賀耳付水指 銘 破袋」は、古伊賀焼の最高峰とされる逸品です。
伊賀焼の魅力と特徴
日本には数多くの焼きものが存在しますが、どの焼きものにもそれぞれの特徴があります。
伊賀焼の主な特徴・魅力をまとめてみましょう。
- 素朴で力強い風合い
- 歪みや凹凸をつけた芸術的な造形美が魅力
- 高温で何度も焼成する「伊賀の七度焼」と呼ばれる製法で作られている
- 耐熱性と蓄熱性が高く、土鍋のような調理器具に最適
伊賀焼は、高温で焼かれることから生まれる緑色のビードロ釉、灰かぶりや焦げ、などを特徴とし、素朴で力強い風合いを持った焼きものです。
敢えて歪みや凹凸をつけた「破格の美、破調の美」と呼ばれる、基本を崩した芸術的な造形美が魅力でしょう。
耐火性が高いことから「伊賀の七度焼」と呼ばれる製法で高温で何度も焼成されるため、窯の中で壊れてしまうものも多く、完成品として取り出されるものが少ないと言われています。
また、伊賀焼といえば土鍋が有名です。
これは、古琵琶湖層と呼ばれる地層から採れる伊賀の土は、非常に蓄熱性が高く、じっくりと熱が伝わることから調理に適しているためです。
これほどの優秀な耐火性、蓄熱性を持つ陶土は、国内では伊賀の土のみとされています。
伊賀焼の歴史
伊賀焼の歴史は古く、正確な年代は分かっていませんが700年代頃から作られていたという記録が残されています。
当初は、壺やすり鉢などが焼かれており、信楽焼と大きな差がなく見分けることが難しかったとされていますが、室町時代頃には、伊賀焼には耳と呼ばれる取っ手が付いた作品が多く見られ、信楽焼と区別されるようになりました。
茶の湯が流行した安土桃山時代には、茶壺や茶入などの茶器が作られるようになります。
安土桃山時代が終わると、ほとんど焼かれなくなってしまった伊賀焼でしたが、江戸時代中期には藤堂藩の保護下に置かれ、生産が再燃します。
現在の伊賀焼は国の伝統工芸品にも指定されており、日本全国に流通している人気のある焼きものです。
伊賀焼のおすすめ人気窯元5選!素朴な風合いが魅力
さまざまな作品がある伊賀焼の中から、おしゃれでモダンなデザインのおすすめの窯元を5選紹介します。
まとめると次のとおりです。
- 長谷園
- 春萌窯
- 土楽窯
- ましの窯
- 忠央窯
1つずつ見ていきましょう。
1. 長谷園
「長谷園」は、江戸後期の1832年、伊賀市丸柱の自然豊かな山深い地に開窯しました。
現在は、8代目の長谷康弘さんが当主を務めています。
「作り手は真の使い手であれ」をコンセプトに、その時代のライフスタイルに沿ったものづくりを目指している窯元です。
美味しさを追求したさまざまな土鍋を制作しており、素材、形、デザインなど、それぞれに特徴を持った魅力的な作品ばかり。
ご飯が美味しく炊ける「かまどさん」や、おしゃれな「ビストロ土鍋」などのユニークな土鍋を次々と開発しており、料理が楽しくなるラインナップで大人気のブランドです。
ビストロ土鍋
こちらのスタイリッシュな土鍋は、炒め物、蒸し焼き、煮込み、オーブン焼きなどさまざまな調理ができ、メニューのバリエーションを広げてくれる優れものです。
なんといっても土鍋らしくない洗練されたルックスは、そのまま食卓に出してもおしゃれにきまります。
オーブンに入りやすいよう工夫された設計と珍しいフラットなフタはコンパクトに収まり、省スペースで収納できるのも嬉しいポイントでしょう。
プロの料理人にも愛される老舗窯元の確かな技術と遊びごごろが詰まった、おすすめの逸品です。
2. 春萌窯
小辻真一さんの手掛ける「春萌窯」は、静かな田園風景に囲まれた里山にある工房です。
伊賀の原土の小石や鉄分などの不純物をあえて残し、素朴な表情やあたたかさを大切にした、親しみやすい暮らしの器を制作しています。
また目を見張るような美しさのブルーを特徴としたモダンでスタイリッシュな作品は、日本人のみならず、海外の人々にも人気を博しています。
青市松皿
日本の伝統柄である市松模様に透明感のあるブルーをあしらったプレートです。
味わいのある肌合いを持ちつつもモダンな雰囲気が漂い、どんな料理にも合わせやすく食卓をおしゃれに演出します。
盛り付けにより見え隠れするブルーがアクセントとなり、食材をより鮮やかに引き立ててくれるでしょう。
3. 圡楽窯
現在8代目となる福森道歩さんが当主を務める「圡楽窯」は、伊賀市丸柱の地で江戸時代から続く窯元です。
職人が手挽きろくろを用いて制作する作品は、お皿やお椀、土鍋、茶器などさまざまです。
どの作品も伊賀の良質な土が使われ、1つひとつが丁寧に丹精込めて作られています。
特に、幅広い調理が可能な土鍋と煮込み鍋は、圡楽窯の傑作と言われる自慢の作品です。
青土鍋
圡楽窯では黒鍋が定番ですが、こちらは奥深いグリーンのシンプルな一人鍋です。
比較的平なフォルムなので、鍋焼きうどんやパスタなどちょっとした温かいメニューが欲しい時に、小さすぎず大きすぎずちょうど良いサイズ感でしょう。
フタもつまみやすく使い勝手も抜群です。
飽きのこないデザインで長く愛用できる土鍋です。
4. 光月窯
伊賀焼の里・伊賀市丸柱にある「光月窯」は、3代目大平誠さんが当主を務める窯元です。
暮らしに寄り添う日常使いしやすい食器を中心に、伊賀流墨流しの技法を使ったマーブル模様のアートな作品も手掛けており、幅広いデザインが楽しめます。
伊賀流墨流し
伊賀流墨流しの作品は、お皿、マグカップなどさまざまな種類とカラフルなマーブルが魅力的です。
どの作品も1つずつ違った模様で、同じものはまたとありません。
外側も内側も墨流しのマーブル模様が施され、見る角度によっていろいろな表情が楽しめます。
自分だけのお気に入りのアイテムのひとつに加えてみてはいかがでしょう?
5. 忠央窯
天保年間に開窯した「忠央窯」は、現在の当主は5代目の秋野宏和さんです。
伝統的な技術を受け継ぎながらも、当主独自の新しい感性を吹き込むべく、日々作品づくりに励んでみえます。
忠央窯の特徴は、なんといっても岩が苔むしたような味わい深い土肌でしょう。
独自にブレンドした粗めの伊賀土を手びねりを中心として1つずつ丁寧に仕上げています。
季楽 珈琲椀 平鉢 豆皿
伝統的な雰囲気を持った作品が多い忠央窯ですが、こちらの季楽シリーズはモダンな色調と質感を持たせた作品です。
釉薬によるランダムな模様と濃淡が味わいのある逸品です。
上質ななかにも、ほどよいカジュアルさが感じられ、スタイリッシュな魅力を引き出しています。
唯一無二な日常使いの食器で、毎日のテーブルを贅沢に演出してみませんか?
伊賀焼を使って日常にぬくもりを添えましょう!
いかがでしたか?
おしゃれでモダンな伊賀焼のおすすめの窯元をご紹介してきました。
本記事で大切なポイントをまとめると次のとおりです。
- 伊賀焼は三重県伊勢市を中心に作られている焼きもの
- 素朴で力強い風合いや歪みや凹凸をつけた芸術的な造形美が魅力
- 高温で何度も焼成する「伊賀の七度焼」と呼ばれる製法で作られている
- 耐熱性と蓄熱性が高く、土鍋のような調理器具に適している
- おすすめの窯元は「長谷園」や「春萌窯」など
伊賀焼は、土を感じる素朴な風合いと力強さ、耐火性・蓄熱性の高さを特徴とした焼きものです。
もし、幅広い調理が可能な機能性の高い鍋を探しているならば、ぜひ本記事を参考に、伊賀焼の土鍋も視野に入れてみてください!
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