近年注目を集めている「やちむん」は、ぽってりとした温かみのある風合いと個性的なデザインが特徴的な沖縄の焼きものです。
本記事では、その魅力や歴史、おすすめの作品などをご紹介していきます。
やちむんに興味をお持ちの方はぜひ参考にしてください。
弥のまる 高橋侑也
20歳の頃、賛否両論本店就職へ就職し27歳で料理長に就任。
10年修行をしたら独立したいという思いから30歳で退社し、2021年12月に「弥のまる」をオープン。
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お客様との距離感を大切にし、リーズナブルな価格でしっかりとした料理を出すことで満足してもらえるお店づくりを心がけている。
やちむんとは?
「やちむん」とは、沖縄の方言で「やち」=「やき(焼き)」、「むん」=「もん(物)」を意味し、つまり「やちむん=焼きもの」のことを指します。
沖縄で生産されている焼きものは、総称して「やちむん」と呼ばれており、ぽってりと厚みのある形状や鮮やかな色味、おおらかな絵付けが特徴です。
沖縄の豊かな自然と明るく陽気な土地柄が表現されたようなやちむんは、人々を惹きつけるパワーに溢れています。
やちむんの歴史
やちむんの歴史は長く、沖縄が琉球王国と呼ばれていた時代にまで遡ります。
17世紀初頭、琉球王国は薩摩藩の支配下に置かれていましたが、薩摩から来た3人の朝鮮人陶工の指導により、湧田窯(現在の那覇市泉崎)にて作陶が始められました。
沖縄で本格的な陶器の生産が始まったのは、この頃だと言われています。
さらに、1682年、琉球王朝の尚貞王(しょうていおう)が、製陶産業の振興のため沖縄県内各地に分散していた窯を統合し、現在の那覇市壺屋に集めました。
これが、現代にまで受け継がれているやちむんの「壺屋焼」の始まりです。
当時は「荒焼(あらやち)」と言って、釉薬をかけずに陶土の素材を生かしたものが主流で、海外との輸出入する飲料や食料を入れるための瓶や壺などが焼かれていました。
後に、釉薬による装飾が施された「上焼(じょうやち)」が焼かれるようになり、皿や酒器、花瓶のような日用雑器など、多様な製品が生産されるようになります。
その後も、中国や薩摩などからさまざまな新しい技法が伝えられ、壺屋焼は独自に発展していきました。
衰退と復興
明治時代に入り、琉球王国が「沖縄県」とされた頃には、瀬戸焼など他県からの安価で丈夫な磁器が浸透し始め、その影響で沖縄の壺屋焼は一時的に衰退していきます。
しかし、1926年頃に起こった「民藝運動」により、やちむんは「日用品としての美」が認められ、全国各地に広まっていったのです。
そして、第二次世界大戦後の1970年代初頭、登り窯から出る煙が公害問題となり、昔ながらの伝統的な製法にこだわる陶工たちは、壺屋から元米軍基地であった沖縄県中部の読谷村に移り住み、登り窯を作って再出発を果たします。
現在では「やちむんの里」と呼ばれ、50ほどの窯元やお店が立ち並ぶ集落となり、沖縄の人気の観光名所として多くの人が訪れる場所となっています。
こうして、一時は衰退するかと思われたやちむんも、焼きものに携わる人々の想いと努力により今日まで発展し続けているのです。
やちむんの魅力
長い歴史を持つやちむんは、他の焼きものにはない、沖縄ならではの魅力に溢れています。
大きな特徴は、鮮やかな色使いの絵付けと躍動的な模様でしょう。
鮮やかな色使い
やちむんの色は、海の色を思わせる美しいコバルトブルーや、南国の逞しい植物を思わせる緑色、茶色などが多く使われます。
使われる釉薬には「オーグスヤー」、「シルグスイ」、「クルグスイ」、「ミーシルー」などさまざまなものがあります。
代表的なものの中から「オーグスヤー」と「シルグスイ」について詳しく見てみましょう。
・オーグスヤー
青緑色の釉薬のことで、真鍮(しんちゅう)を混ぜたもみ灰に水を加えて団子状に丸め、1,000度ほどの高温で焼成したものち、上土灰、具志頭白土、透明釉を混ぜ合わせて作られたもの。
・シルグスイ
サンゴからできた消石灰と籾殻を混ぜ合わせて20時間ほど焼成した後、具志頭白土と白化粧土を加えた透明の釉薬
やちむんの個性際立つ色味は、こうしたさまざまな釉薬により作り出されているのです。
技法と文様
やちむんの伝統的な文様や、よく使われている技法についてご紹介します。
中でも、代表的なものを5つ挙げてみましょう。
技法・文様 | 特徴 |
---|---|
点打ち | 自由に点を打って描く、均一でない丸い文様 |
印花(イングァー) | 可愛らしい花の文様 |
線彫り | ・線で施される文様で、壺屋焼では主に魚がモチーフになっていることが多い ・子孫繁栄の縁起柄 |
イッチン | スポイトのようなものを使い、泥状の土や釉薬で凹凸のある立体的な線や文様を施す技法 |
唐草 | ・やちむんの文様の中でもよく見られる唐草の文様 ・長寿・子孫繁栄・永遠といった意味を持つ |
他にもさまざまな技法があり、沖縄独特の美しい文様は多くの人々を魅了しています。
やちむんのおすすめ人気5選!おしゃれで個性的な作品をご紹介
ここからは、おしゃれで個性的なデザインのやちむんのおすすめを5選ご紹介していきます。
まとめると次のとおりです。
- 一翠窯 角皿長 33
- 陶眞窯 カップ&ソーサー 唐草
- 育陶園 Kamany(カマニー)パスタプレート
- 土工房 陶糸 やちむん 楕円皿
- ノモ陶器製作所 小皿 チチチャン
作品名 | 種類 | サイズ |
---|---|---|
一翠窯 角皿長 33 | 長皿 | 横 29.5cm×縦 11.5cm×高さ1.5cm・重さ 471g |
陶眞窯 カップ&ソーサー 唐草 | カップ&ソーサー | カップ:約 口径 8cm×高さ 7cm 重量 185g 満水時200ml ソーサー:約 径 14.7cm×高さ 2.5cm 重量 230g |
育陶園 Kamany(カマニー) パスタプレート | 深皿 | φ250mm×H25mm |
土工房 陶糸 やちむん 楕円皿 | 皿 | 縦 約12㎝×横 約20㎝×高さ 約1.5㎝ |
ノモ陶器製作所 小皿 チチチャン | 小皿 | 約径 9.7cm × 高さ 2cm・95g |
1つずつ見ていきましょう。
1. 一翠窯 角皿長 33
最初にご紹介するおすすめのやちむんは、「一翠窯」で作陶されている高橋伸也さんの角皿長です。
読谷村で壺屋焼きを学んだ高橋さんの作品は、釉薬を巧みに使ったカラフルさとモダンな幾何学模様が魅力でしょう。
こちらの作品は、くすんだ藍色が落ち着いた印象で、和食だけでなく洋食やアジア料理など、どんな食材にも馴染みやすいデザインです。
同じ模様で赤やオレンジ、黄、緑などのカラーもあり、色味によってさまざまな雰囲気が楽しめるため、何枚か揃えておくと食卓を華やかに演出できるでしょう。
商品詳細
作品名 | 一翠窯 角皿長 33 |
種類 | 皿 |
サイズ | 横 29.5cm×縦 11.5cm×高さ1.5cm・重さ 471g |
2. 陶眞窯 カップ&ソーサー 唐草
こちらは、読谷村にある「陶眞窯」で作られたカップ&ソーサーです。
沖縄らしい大胆な唐草模様が描かれ、手描きの味わい深さと温かさが感じられます。
重みのあるやちむんの中では、比較的軽量で表面もつるりとしているため、上品に楽しめるアイテムでしょう。
商品詳細
作品名 | 陶眞窯 カップ&ソーサー 唐草 |
種類 | カップ&ソーサー |
サイズ | カップ:約 口径 8cm×高さ 7cm 重量 185g 満水時200ml ソーサー:約 径 14.7cm×高さ 2.5cm 重量 230g |
3. 育陶園 Kamany(カマニー)パスタプレート
「育陶園」は、伝統的な釉薬や技法を大切にしつつ、暮らしに寄り添うモダンな作品を生み出している窯元です。
こちらのずっしりとしたパスタ皿は、土づくりから線彫り技法まで、全ての工程が工房での手作りで仕上げられています。
独自に作られた釉薬による奥深い色味が魅力的で、料理をより引き立ててくれるでしょう。
夏のスコールとともに鳴り響く雷をモチーフとした個性的な柄もポイントです。
ほどよい深さがあり、パスタだけでなくカレーやリゾットなどにも使いやすいでしょう。
商品詳細
作品名 | 育陶園 Kamany(カマニー) パスタプレート |
種類 | 深皿 |
サイズ | φ250×H25(mm) |
4. 土工房 陶糸 やちむん 楕円皿
ドット柄が可愛いこちらの楕円皿は、読谷村に工房を構える「土工房 陶糸」の作品です。
1つひとつ異なった表情は、手作りならではのぬくもりと個性が感じられ、飽きのこない素朴さを味わえます。
沖縄の深い海のような藍色と、大地を表現したような茶色は、朗らかで楽しい食卓を演出してくれるでしょう。
商品詳細
作品名 | 土工房 陶糸 やちむん 楕円皿 |
種類 | 皿 |
サイズ | 縦 約12㎝×横 約20㎝×高さ 約1.5㎝ |
5. ノモ陶器製作所 小皿 チチチャン
パッと花が咲いたように見える3色の小皿は、「ノモ陶器製作所」の野本周さんの作品です。
野本さんの作品は、素朴さの中にも可愛らしさがあり使いやすく、料理を引き立ててくれます。
料理を盛り付けるお皿としてだけでなく、デザート皿としてプチケーキやチョコレートなどを乗せても見栄えがするデザインでしょう。
商品詳細
作品名 | ノモ陶器製作所 小皿 チチチャン |
種類 | 小皿 |
サイズ・容量 | 約径 9.7cm × 高さ 2cm・95g |
やちむんの器を使って日常を豊かに彩りましょう!
いかがでしたか?
沖縄の伝統的な焼きもの、やちむんの魅力やおしゃれなおすすめ作品をご紹介してきました。
本記事の大切なポイントをまとめると次のとおりです。
- 沖縄で作られるやちむんは、ぽってりとした厚みと鮮やかな色味、大胆な模様が魅力的な焼きもの
- 伝統的な技法、模様が大切に受け継がれており、釉薬の豊富さも特徴的である
- おすすめは「一翠窯 角皿長 33」や「陶眞窯 カップ&ソーサー 唐草」など
やちむんは、沖縄の暮らしそのものを表しているかのような、素朴さとおおらかさを持った焼きものです。
ぜひ、明るい雰囲気を持ったやちむんを使って、日々の食卓を楽しく彩ってください!
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