信楽焼は、素朴でぬくもりある風合いが魅力の焼きものです。
デザインのバリエーションも豊富で、作家さんそれぞれの個性的な作風も楽しめます。
本記事ではそんな信楽焼について紹介していきます。
鮨たかはし 高橋潤
幼少期より料理が好きで、技を極める職人に憧れ、寿司屋を志す。
ミシュラン三ツ星の名店『鮨さいとう』で修行をし、2014年 銀座に『鮨たかはし』開業。
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NHK きょうの料理でレシピ提供をし、バラエティー番組にも出演するほか、誠文堂新光社『すしのサイエンス』を英語、台湾語、韓国、フランス語で出版。
信楽焼とは?
信楽焼は、滋賀県甲賀市信楽町で作られている陶器です。
「日本六古窯(※)」の一つで、1976年には、国の伝統工芸品として指定されています。
※古くからある日本の陶磁器窯のうち、中世から現在まで生産が続いている代表的な6つの窯(瀬戸、越前、常滑、信楽、丹波、備前)の総称。
毎年春や秋には、陶器まつりなどのイベントも開催されており、有名な焼きもの産地として多くの人々が訪れています。
信楽焼 × たぬきの置物
信楽焼といえば、たぬきの置物をイメージする方も多いのではないでしょうか。
信楽焼 × タヌキのイメージが全国的に広まったのは、昭和天皇が信楽町にお目見えした際に、信楽タヌキを並べて歓迎したことがきっかけとなっています。
また、信楽焼は、2019年に放送された連続テレビ小説「スカーレット」の舞台として滋賀県甲賀市が取りあげられていたことでも、一躍有名になりました。
信楽焼の特徴
信楽焼は、琵琶湖の恵みからくる良質な土を生かして作られています。
ざっくりとして素朴な温もりのある風合いが魅力の焼きものです。
また、信楽焼に使われる陶土は、独特の粗さのあるコシの強い粘土質でできています。
そのため、たぬきの置き物をはじめ、火鉢、土鍋など、肉厚なものや大物陶器を作るのに適した特性を持っていることも特徴です。
窯変による多彩な発色
信楽焼は、焼成の工程でピンクや肌色、赤褐色系の美しい緋色(火色)が現れることも大きな特徴です。
朝ドラの「スカーレット」という題名は、このことにヒントを得て付けられたタイトルです。
他にも、表面に灰が降りかかることによってできる緑色の「ビードロ釉」、黒色の「焦げ」など、自然釉や釉薬による多彩な発色も見られます。
他の産地にはない味わい深さと、幅広い豊かなデザインが楽しめるのも信楽焼の魅力です。
信楽焼の歴史
信楽焼の発祥は、奈良時代に聖武天皇が設けた紫香楽宮(しがらきのみや)の屋根瓦が焼かれたことだとされています。
黄瀬地区の甲賀寺跡では、軒丸瓦や軒平瓦が発掘され、信楽町の文化財となっています。
鎌倉時代中期
鎌倉時代中期には、主に壺や鉢などの日用品が多く作られていましたが、茶の湯が確立した室町時代・安土桃山時代には、茶道具の生産が活発になりました。
日本独自の美意識である「わびさび」が感じられる信楽焼の美しさは、茶人をはじめとしてたくさんの人々を魅了したと言われています。
江戸時代〜現代
江戸時代になると、生活用・商業用として徳利や土鍋も多く作られます。
明治時代からは釉薬の研究がされるとともに、耐火性の優れた信楽焼の火鉢が流行しました。
信楽焼の火鉢は、昭和30年代前半まで信楽の主要製品とされ、国内生産の80%を占めるほどだったといいます。
現在では、日本の伝統工芸品として指定され、たぬきの置き物を代名詞に「陶器のまち 信楽」としてたくさんの人々に愛されています。
信楽焼の装飾技法
信楽焼は、愛知県「常滑焼」の技法の影響を受けています。
よって、多くの焼きものの工程にある「水簸(すいひ)(※)」を行わずに、材料の粘土を自然な状態のままで利用します。
※採取した原土を水で洗い流して、余分なものを取り除く作業のこと。
また、焼成を行う前の素地には「模様づけ」や「絵付け」、焼成後には「釉かけ」を施すなど、さまざまな装飾技法が用いられることも特徴です。
なかには、このような装飾技法を用いずに、焼成の際に薪の灰をかぶらせる「自然釉」や粘土成分の酸化作用を促す「酸化焼成」を行うこともあります。
信楽焼のおすすめ人気窯元・作家6選!おしゃれでモダンなデザインが魅力
ここからは、おしゃれでモダンなデザインが魅力の信楽焼の作家さんを紹介していきます。
まとめると次のとおりです。
- 藤原 純さん
- 村上 直子さん
- 古谷 浩一さん
- 東月窯 久保 雅裕さん
- 大谷製陶所 大谷 哲也さん・桃子さん
- 堂本陶工房 堂本正樹さん
順番に紹介していきましょう。
1. 藤原 純さん
藤原純さんは、独特の色味のブルーを基調とした作品が魅力の人気作家さんです。
曽祖父の代から受け継がれている窯元「古仙堂」に身を置きながら、自身の作品も精力的に制作されています。
躍動的で独創的な造形美がとても魅力的で、藤原さんの代名詞ともなっている海の碧のようなブルーは、透きのある味わい深さが感じられます。
また、見た目のよさだけでなく実用的に使えることも考えられています。
うつわとして、芸術として、個性的な美しさが光る作家さんです。
2. 村上 直子さん
村上直子さんは、同じく陶芸作家の白井隆仁さんとともに、アトリエ&ギャラリー「器のしごと」を手掛けています。
村上さんの作品の魅力は、植物をモチーフにした繊細な可愛らしさ。
暮らしに馴染む、シンプルで味わい深いうつわやアクセサリーを作り続けています。
画像の「shiromoegi (シロモエギ)」シリーズは、釉薬をかけて焼成することで現れる、琥珀色の点々とした模様が楽しいコレクションです。
盛り付ける料理を選ばず、食材を引き立ててくれるモダンなデザインが魅力でしょう。
独特な風合いと手作りのあたたかみが感じられ、おしゃれな作風が楽しめる作家さんです。
3. 古谷 浩一さん
古谷 浩一さんは、信楽町神山の工房「古谷製陶所」で作陶されている作家さんです。
鉄分の多い赤土を独自にブレンドし、白泥をかけて2度にわたる本焼きをすることで、優しく素朴な風合いの粉引きの作品を生み出しています。
古谷さんの作品は、どんな料理にも合わせやすく、他の器と一緒に使っても馴染みがよいおしゃれな器です。
形や模様など少しずつバリエーションを加えたデザインは、それぞれのライフスタイルや住空間に合わせたものを選べます。
繊細な心遣いが感じられるあたたかみのある作風の作家さんです。
4. 東月窯 久保 雅裕さん
久保雅裕さんは、兵庫県神戸市で作陶されている陶芸作家で、1997年に東月窯を開きました。
シンプルながら個性的で、愛らしい花のような温もり溢れる作風が魅力です。
どの作品も、どこかレトロなイメージが感じられ、味わいのある土の風合いが優しい気持ちにさせてくれます。
フランスの片田舎の食卓のような、可愛らしく華やぎのある彩りを与えてくれる作家さんです。
5. 大谷製陶所 大谷 哲也さん・桃子さん
信楽町の自然に囲まれた「大谷製陶所」は、2008年に大谷哲也さんと大谷桃子さんご夫婦の工房として開窯されました。
国内はもとより、台湾、中国、アメリカ、オーストラリアなど、海外からの個展のオファーも絶えない人気作家ご夫婦です。
哲也さんは、白にこだわったシンプルでミニマルなデザインのスタイリッシュなうつわ、桃子さんは、粉引きにグリーンや花などの植物の絵付けをしたオリエンタルな雰囲気のうつわと、それぞれに個性的な作風です。
工房と繋がる自宅からは、お二人のリラックスした心地よくシンプルな生活が伺え、日常がそのまま作品に表現されているようです。
それぞれ作風は異なりますが、「日々の暮らしを豊かにする器を」という想いは同じ。
真のシンプルな心地さを作品を通じて教えてくれるような素敵な作品を作り続けています。
6. 堂本陶工房 堂本正樹さん
堂本正樹さんは、古谷製陶所の古谷信男さんに師事したのち、2007年に独立して信楽に堂本陶工房を構えました。
信楽特有の土の存在感を大切にしつつ、昔ながらの伝統釉を使って制作されています。
日常の暮らしの中で使う食器としてのうつわ作りを心掛けているという堂本さんの作風は、和食器でありながらヨーロッパのアンティークのような雰囲気が魅力です。
信楽焼のうつわを使って食卓を素敵に演出しましょう!
いかがでしたか?
本記事のポイントをまとめると次のとおりです。
- 信楽焼は滋賀県甲賀市信楽町で作られている陶器
- 日本六古窯の1つで1976年に国の伝統工芸品として指定されている
- 素朴なぬくもりのある風合いが魅力の焼きもの
- 焼成の工程で現れるピンクや肌色、赤褐色系の美しい緋色(火色)が大きな特徴
- 信楽焼の発祥は奈良時代に紫香楽宮の屋根瓦が焼かれたこと
- 信楽焼の技法は釉かけ、自然釉など多種多様
- おすすめの人気作家さんは「藤原純さん」「村上直子さん」ほか
素朴で自然のぬくもりが感じられる信楽焼は、多彩なデザインを楽しめる焼きものです。
ぜひ実際に信楽のうつわを手にとってその魅力にふれてみてください!
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