有田焼は、華やかな見た目の美しさだけでなく日常的にも使いやすいことから人気のある磁器です。
本記事では、その歴史ある魅力や特徴に迫るとともに、おすすめ・人気の窯元を紹介します。
有田焼についての知識を深めることで、より食器選びが楽しくなるでしょう。
TOGO’S 東郷 健一郎
1987年ニューヨークの老舗寿司店「初花」で修業を重ねる。
5年の勤務時、支店の料理長を任される。その後、寿司以外の料理を研鑚すべく、マンハッタンの人気日本料理店で2年間料理の腕を磨く。
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1994年「NOBU」オーナーシェフの松久信幸氏の熱い誘いに応え、「NOBU NEW YORK CITY」オープンスタッフとして入店。
その後、2009年株式会社TOGO’Sを設立。
尽きる事のない探求心とこだわり、和食という枠にとどまる事なく、いつまでも記憶に残る料理を提供している。
有田焼とは?
有田焼は、日本でもっとも古い歴史を持つ磁器で、佐賀県有田町を中心に作られています。
熟練した職人による赤・藍・金・黄・緑などの色鮮やかな絵付けが特徴的で、現在では、日本のみならずヨーロッパをはじめ、海外でも有名で人気のある焼き物となっています。
また、有田焼と並ぶ焼き物として伊万里焼も有名ですが、実は有田焼と伊万里焼はどちらも同じものです。
伊万里焼という名称は、17世紀中頃、有田焼の輸出に佐賀県の伊万里港が使われていたことが由来となっており、江戸時代までは「伊万里焼」という名で普及していました。
明治以降は「有田焼」と呼ばれるようになりましたが、伊万里焼と有田焼は同じ種類の焼き物です。
3つの様式
有田焼の様式は大きく分けて3種類あり、伝統的な有田焼は、次の様式のいずれかで絵付けされていると言われています。
- 柿右衛門様式
- 古伊万里金襴手様式
- 鍋島様式
1つずつ詳しく見ていきましょう。
柿右衛門様式
1670年代頃に確立したとされている「柿右衛門様式」は、温かみのある柔らかな乳白色の素地(濁手素地)の上に、赤・緑・黄・青などを用いた鮮やかな色合いで、日本画のような構図を描いたものです。
充分な余白を残して色絵が描かれている様は「余白の美」とも評されており、その色絵には「鹿紅葉」「波千鳥」「松竹梅」「粟鶉」など典型的なモチーフが描かれているのも特徴です。
柿右衛門様式の色絵磁器は、日本国内だけでなく海外でも高く評価され、オランダ東インド会社によってヨーロッパや中国などに多く輸出されていました。
鮮やかで繊細な日本的な美しさは、ヨーロッパの王侯貴族たちを魅了し、18世紀にはドイツのマイセン窯をはじめとした海外の磁器製造業により、模倣品も多く作られたと言います。
鍋島様式
「鍋島様式」は、1675年頃から佐賀鍋島藩が製造元となって、当時の匠の技術を集結させ最高級品として発展してきた様式です。
青みがかった地肌や幅広の高台、裏文様に特徴があり、大きく分けると、呉須による染付と赤・青・緑の3色の釉だけで表現する「色鍋島」、藍色で緻密な色絵が描かれた「藍鍋島」、染付と青磁を併用した自然な青翠色の「鍋島青磁」があります。
中でも、上絵を施した「色鍋島」は、佐賀藩主が使う食器や幕府や大名などへの献上品として、格調ある最高級品とされてきました。
計算された完璧な技巧と雅な美しさを持った鍋島式の技法と伝統は、1871年、廃藩置県によって一旦は途絶えたものの、現在は、当時の御用窯の絵付を担当していた今泉今右衛門家により復興・継承されています。
古伊万里金襴手様式
1688年頃から、それまで流行していた「柿右衛門様式」と並んで「古伊万里金襴手様式」が登場してきました。
「古伊万里金襴手様式」は、これまでの「柿右衛門様式」と異なり、呉須による濃い染付に金襴手と呼ばれる赤や金の多彩な絵具を用いて、素地の余白を文様で埋め尽くすような贅沢で絢爛なイメージのものでした。
「古伊万里」という名は、これらの有田焼が伊万里港から盛んに輸出されていたことが由来しており、日本独特の風情ある美意識とは対極とも言える、異国情緒溢れる華やかさが特徴の様式です。
有田焼の魅力・特徴
有田焼は、透き通るような白い磁肌に呉須による藍色の染付、ガラス質の上絵具(赤・緑・青・黄・紫)を使った鮮やかな赤絵を特徴とする磁器です。
真っ白な白磁に映える華やかな絵付けは、雅な美しさがあり、ガラスのような滑らかな手触りや、爪ではじいた時に発する高い音も魅力でしょう。
さらに、有田焼は、外見のよさだけでなく機能面にも長けています。
耐久性が高いことから実用性にも優れており、美術品のみならず日用品としてもさまざまなものが作られています。
有田焼の歴史
有田焼の歴史は、16世紀末、有田町の泉山で、朝鮮人陶工の李参平らによって磁器の原料となる陶石が発見されたことから始まりました。
この陶石を使って、日本ではじめて磁器が焼かれ、有田は日本最古の磁器の発祥の地として発展し、400年以上もの歴史を誇る有名な焼き物となっています。
有田焼が始まった当初は、呉須による藍色の染付のみの作品を中心に作られていましたが、初代の柿右衛門の登場などにより、赤や緑などを使った彩り鮮やかな磁器が作られるようになり、様式も増え、海外への輸出も盛んになりました。
かつて世界の王侯貴族にも愛された、豪華絢爛な江戸時代の有田焼は、現代に至っても装飾品としてだけでなく、食器としてもアンティーク好きな方に好まれ楽しまれています。
そして、現代の有田焼は、古い伝統技術を生かしつつ、ライフスタイルに合わせたモダンな世界観を持つ作品も増え、わたしたちの生活をより豊かに彩りあるものにしています。
有田焼のおすすめ有名窯元5選!おしゃれでモダンなデザインが魅力
有田焼の窯元はたくさんありますが、中でも「柿右衛門」「源右衛門」「今泉今右衛門」の3つの窯元は「有田三右衛門」と呼ばれ、有田を代表する窯元として有名です。
ここでは、その3大窯元を含めた5つの窯元を紹介していきます。
まとめると次のとおりです。
- 柿右衛門窯
- 源右衛門窯
- 今右衛門窯
- 香蘭社
- 深川製磁
1. 柿右衛門窯
「柿右衛門様式」は、この「柿右衛門窯」の初代柿右衛門が生み出したものです。
日本で初めて鮮やかな赤絵の技法を使い、乳白色の余白と色絵のコントラストの美しさを現代に伝え続けている由緒ある窯元で、今や15代目まで受け継がれています。
ヨーロッパ磁器界の名窯「マイセン」も、柿右衛門様式を模倣した作品を多く作っており、ヨーロッパ文化にも多大な影響を与えました。
明るく繊細な絵画のような構図が描かれた色絵磁器は、華やかで日本的な風情も感じられ、世界中の人々を魅了しています。
2. 源右衛門窯
260年以上の歴史を持ち、古伊万里様式を基本にしながらも、独創的でモダンなデザインを次々と取り入れているのが「源右衛門窯」。
絵付けに使う柄を、器だけでなくアクセサリーやインテリアにまで広げていったのもこちらの窯が最初です。
近年では、胴体を有田焼で装飾した万華鏡や、洞爺湖サミットで各国の首脳に贈られた有田焼を施した万年筆など、革新的な視点の作品を生み出し、有田焼の新しい魅力を伝えています。
センスの良い鮮やかな色使いと洗練されたデザイン性の高い作品は、陶磁器愛好家はもちろん、美しいものを好む人々からも支持されている窯元です。
3. 今右衛門窯
「今右衛門窯」は、370年以上の歴史と伝統のある窯元で、現在は十四代目に受け継がれています。
江戸時代、鍋島藩による幕府や大名への献上品として「色鍋島」が作られていましたが、その御用赤絵師を務めてきた家系が今泉今右衛門家で、今右衛門家の卓越した技術は、国の重要無形文化材保持団体の認定を受けています。
現在では、モダンなデザインを採り入れた作品も多くあり、2002年に14代に襲名した今右衛門は、江戸時代の技法である「墨はじき(墨で模様を描き出す作風)」にヒントを得て、「雪花墨はじき」という技法を生み出しました。
この技法は、白の濃淡だけで表現される美しい雪の結晶文様が特徴で、「墨はじき」を用いて描いた梅の花の芯が、焼成後は雪の結晶のように見えることから、試行錯誤を重ねて作り出されたものです。
歴史ある伝統を受け継ぎながら、格調の高さを持った新しい有田焼の美を追求し続けている由緒ある窯元です。
4. 香蘭社
「香蘭社」の歴史は、今から300年以上前の元禄の頃、初代深川栄左衛門が肥前有田で磁器製造に着手したことから始まりました。
明治維新の激動期には、鍋島藩の保護・支援を失った有田焼でしたが、その復興を果たすべく先導的役割を担ったのが八代の深川栄左衛門で、当時の優れた職人たちを集結させて「香蘭社」を作り上げました。
設立当初から、宮内省御用達の栄に浴し、明治天皇から歴代の天皇や皇族に愛されてきたのも、他にはないその華麗な上品さを持ったデザイン性の高さからでしょう。
「香蘭社」の作品は、有田焼の特徴である透けるような白磁に、華やかな赤絵や優美な染付を施した伝統的なもの、ヨーロッパで愛好された金銀彩を用いた絢爛なもの、現代のライフスタイルに合わせたナチュラルな優しい色合いの釉薬を使ったものなど、多彩なバリエーションを展開しています。
5. 深川製磁
江戸時代1650年頃より有田で窯焚き業を行っていた深川家は、明治27年、深川忠次によって窯元「深川製磁」を始めました。
有田の伝統的な技法に、早くから欧州の先進技術を採り入れ、日本の雅美とヨーロッパのエスプリを融合させた独自のデザイン性を追求してきました。
1900年のパリ万博では、緻密な装飾技巧で表現された「大花瓶」が評を博したことを切っ掛けに、深川製磁の有田焼は国際的な注目を集め、ロンドン、パリ、ブリュッセルなどに代理店を開設するなどして、世界に有田焼の魅力を発信します。
特に、澄んだ美しさを持った品格のある青のグラデーションの染付は、「フカガワブルー」と評され、従来の有田焼のデザイン様式とは一線を画した斬新さが高く評価されました。
現在も、そのハイセンスな感性を生かした作品が多く生み出されており、日本的な風情ある美しさ、ミニマルでモダンな機能美、洗練された白と青のコントラストとグラデーション、上質で気品あふれるデザインなど、さまざまな魅力を持ったラインナップを展開している窯元です。
おしゃれな有田焼を使って生活に彩りを添えましょう!
いかがでしたか?
有田焼の魅力や特徴、有田三右衛門をはじめとしたおすすめ・人気の有名な窯元をご紹介しました。
本記事のポイントをまとめると次のとおりです。
- 有田焼は佐賀県有田町を中心に作られている焼き物
- 日本で最初に作られた磁器である
- 大きく分けて「柿右衛門様式」「古伊万里金襴手様式」「鍋島様式」の3つの様式がある
- 有田焼の特徴は、透き通った白磁に鮮やかな赤絵と藍色の染付が描かれていること
- 滑らかな手触りや爪ではじいたときに鳴る高い音も魅力
- 有田焼は400年以上の歴史を持ち世界的にも有名な日本の伝統工芸
- 歴史ある代表的な窯元、有田三右衛門とは「柿右衛門」「源右衛門」「今泉今右衛門」の3つ
- 他にも「香蘭社」「深川製磁」など有名な窯元が多くある
現在の有田焼は、日本的な美しさを持つ伝統的なものからモダンでデザイン性の高いものまで、たくさんの魅力的な作品があります。
本記事を参考に、ぜひ有田焼を手にとってその魅力を感じてみてください!
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