素朴で優しい風合いの小石原焼は、日常使いの生活雑器として広く使われている焼きものです。
本記事では、実用性と美しさを兼ね備えた小石原焼の魅力をお伝えするとともに、おすすめの作品もご紹介します。
「用の美」を感じるモダンな小石原焼を探している方は、ぜひ参考にしてください。
弥のまる 高橋侑也
20歳の頃、賛否両論本店就職へ就職し27歳で料理長に就任。
10年修行をしたら独立したいという思いから30歳で退社し、2021年12月に「弥のまる」をオープン。
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お客様との距離感を大切にし、リーズナブルな価格でしっかりとした料理を出すことで満足してもらえるお店づくりを心がけている。
小石原焼とは?
小石原焼は、福岡県朝倉郡東峰村を中心に作られている陶器です。
生活雑器として使われることが多く、素朴であたたかな優しい風合いを特徴としています。
350年以上にも渡り、受け継がれている焼きもの文化を支えてきた基盤は、小石原地区の豊かな自然環境です。
標高の高い山々に囲まれた自然豊かな土地であるため、登り窯の燃料となる木材が豊富にあったこと、焼きものに適した赤土がとれたことなどから、小石原焼は現在まで大切に受け継がれ作り続けられてきました。
現在、小石原地区には、40軒以上もの窯元が点在しており、5月と10月の年2回のお祭りのシーズンには多くの観光客で賑わいを見せています。
小石原焼の歴史
小石原焼の発祥は、1669年、高取焼(※)の初代・髙取八蔵の孫にあたる八之丞が、小石原地区中野で良質な陶土を見つけ、皿山に開窯したことがきっかけとされています。
※高取焼…1600年、福岡の藩主を務めていた黒田長政により開窯された焼きもの。
1682年になると、筑前福岡藩の3代目藩主・黒田光之が伊万里から陶工を招き、中国の製法にならって磁器を作りはじめます。
しかし、小石原の土が磁器向きでなかったこともあり、生産は中断してしまいます。
その後、当時すでに茶陶を手掛けていた高取焼との交流により再び製造が始まり、いまに続く陶器の小石原焼の原型が生み出されました。
「用の美の極地」とされた伝統工芸品
小石原焼に大きな転機を与えたのは、第2次世界大戦後に活発化した民藝運動(1926年〜)でした。
運動が広まっていく中、柳宗悦、バーナード・リーチらが小石原地区を訪れ、小石原焼の手仕事による伝統的な技法に触れ、「用の美の極地」という言葉を用いて賞賛したのは有名なエピソードです。
「用の美」とは、暮らしの中で使われているさまざまな日用雑器に対して、愛着をもって使っていく中で実感できる「実用性の中の美しさ」のことです。
これを機に、小石原焼は全国的に知られるようになったのです。
1958年には、ベルギー・ブリュッセルで開かれた万国博覧会でグランプリを受賞し、「用の美」のキャッチフレーズと共に、日本のみならず世界的にも注目されるようになりました。
また、小石原焼は、1975年、日本で初めて国の伝統的工芸品に認定された焼きものでもあります。現在も江戸時代から受け継がれる伝統に大切に守られながら、日常の器として発展し続けています。
小石原焼の魅力
小石原焼は、土のぬくもりが感じられるあたたかみのある風合いが魅力です。
もっとも大きな特徴は、素地に刻まれた「飛び鉋(とびかんな)」や「刷毛目」と呼ばれるリズミカルな幾何学模様でしょう。
この伝統的な装飾技法は、 赤土の上に白色の化粧土をかけ、職人が鉋や刷毛を用いて、ろくろを回しながら1つひとつ描いていきます。
ちなみに、小石原焼と同じような「飛び鉋」の模様を特徴とする焼きものに、大分県の「小鹿田焼(おんたやき)」があります。
小鹿田焼は、小石原焼をルーツに持つ焼きものであることから、小鹿田焼と小石原焼は「兄弟窯」と呼ばれています。
伝統技法と作り手の個性
小石原焼は、今も昔も変わらず、「飛び鉋」や「刷毛目」のような伝統的な装飾技法が用いられています。
主な装飾方法をまとめると次のとおりです。
装飾技法 | 画像 | 方法・特徴 |
---|---|---|
飛び鉋 | ・時計のぜんまいから作られる鉋を道具として用いる ・化粧土をかけた器をロクロに乗せ回転させながら鉋を当てて模様を入れる技法 ・鉋が当たったところだけが削られ、幾何学的な模様が生まれる | |
刷毛目 | ・化粧土をかけてすぐに刷毛を当てながらロクロを回し線を描いていく技法 ・当て方により線の細さや太さに変化が出せる | |
櫛目 | ・化粧土をかけてすぐに櫛型の道具を使って模様をつける技法 ・波状の線模様が多い | |
流し掛け | ・ゆっくりとロクロを回転させながら等間隔で釉薬を流し掛ける技法 | |
打掛け | ・成形後の作品の表面に釉薬を打ち付けるようにして少しずつ落とし掛けていく技法 | |
指描き | ・化粧土をかけてすぐロクロを回転させながら指で模様を描く技法 |
現代では、こうした装飾技法に作家それぞれの個性が表現されており、さまざまな作風を楽しむことができます。
例えば「飛び鉋」の技法であれば、その模様の大きさや間隔などが作り手によって異なっており、その上に釉薬を加えて変化をつけたり、それぞれのアイデア、試行錯誤によって多種多様なデザインが生み出されています。
暮らしに溶け込む焼きもの
小石原焼は、同地区の山々から取れる赤土を使って作られており、この土によって、小石原焼ならではの飾らない素朴な質感が生み出されています。
1300℃の高温で焼きしめられるため、丈夫で割れにくく日常使いに適した性質を持っています。
技術の進歩により工場での大量生産が可能な時代ですが、小石原焼は、今も変わらず原料作りから焼き上げまで全ての工程が手作業で仕上げられ、普段の暮らしの中で使いやすく工夫された実用性が魅力です。
小石原焼の陶芸家たちは、伝統を大切に受け継ぎながらも、現代の暮らしに寄り添った新しいデザインと実用性にこだわり追求し続けています。
モダンでスタイリッシュな小石原焼のおすすめ人気5選!
さまざまな小石原焼の中から、モダンでスタイリッシュなデザインのおすすめの作品を5選ご紹介します。
まとめると次のとおりです。
- 翁明窯元 手付スープカップ 四方がけ 白釉
- 圭秀窯 マグカップ豆皿
- やままる窯 きのこカップ
- 蔵人窯 11cm皿 飛びかんな
- まるた窯 櫛目文皿
1つずつ見ていきましょう。
1. 翁明窯元 手付スープカップ 四方がけ 白釉
小石原焼を代表する「翁明窯元」は、伝統的な技法を用いながらドット柄や北欧柄のようなモダンなデザインを取り入れている窯元です。
可愛くて土のあたたかみが感じられるスープカップは、ポップな雰囲気も持ち合わせ、カフェオレやホットミルクにもぴったりなデザイン。
ほっこりとしたくつろぎの時間を過ごせる器です。
2. 圭秀窯 マグカップ豆皿
「圭秀窯」の作品は、艶のある「白」と「飴」が特徴的。
こちらの作品は、コーヒーカップを形どったユニークな豆皿です。
2色の釉薬にこだわったシンプルな美しさが、生活にも自然に馴染みます。
小さなフルーツやお菓子などはもちろん、小物入れとしても可愛らしく使えるでしょう。
3. やままる窯 きのこカップ
やままる窯の作品は、可愛らしくほっこりとしたデザインが特徴。
見た目の質感も手に持った感触も、小石原の自然を感じるようなあたたかな風合いが魅力です。
子どもにも大人にも人気のきのこカップは、コロンとした形状にフタ付きのデザインで、保温が効いて埃が入るのも防げます。
ドリンクはもちろん、プリンや茶碗蒸しにも使える優秀カップです。
4. 蔵人窯 11cm皿 飛びかんな
「蔵人窯」は、家族3人それぞれが個性を持った作風で作陶している窯元です。
小石原焼の伝統を大切にしつつ、自由で新しいスタイルの作品を生み出しています。
こちらのプレートは、飛び鉋の技法にアレンジを加えたり、釉薬を合わせて美しいグラデーションを加えたりと独自の作風が楽しめる作品。
伝統的な装飾技法にモダンなデザインが加わった新しさが、食卓をスタイリッシュに彩ってくれるでしょう。
5. まるた窯 櫛目文皿
「まるた窯」の 太田剛速さんによる作品です。
釉薬による美しい水色が爽やかな印象で、「櫛目」(※)という伝統技法が施されています。
※櫛目…櫛のような道具を使い模様を施す技法。
水色と白の縞になった模様により、どこかモダンな雰囲気を持ちながらも、小石原焼の独特なぬくもりある質感が魅力的です。
深さもある器なので、汁気のある料理にも使いやすい器でしょう。
小石原焼を使ってほっこりした時間を楽しみましょう!
いかがでしたか?
小石原焼の魅力とその歴史、おすすめの作品を5選ご紹介してきました。
本記事で大切なポイントをまとめると次のとおりです。
- 小石原焼は、福岡県朝倉郡東峰村を中心に作られている陶器
- 素朴であたたかな優しい風合いと「飛びかんな」「刷毛目」などの伝統技法による模様が魅力
- 日本で初めて国の伝統的工芸品に認定された焼きもの
- 「用の美」を確立した焼きものとしても有名
- おすすめの作品は「翁明窯元 手付スープカップ 四方がけ 白釉」や「圭秀窯 マグカップ豆皿」など
小石原焼は、派手さはないものの、ほっこりとしたぬくもりある雰囲気を好む方も多く人気のある焼きものです。
ぜひ本記事を参考に、小石原焼を手に取って、そのあたたかな風合いと、和みある優しい魅力に触れてみてください!
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