岐阜の焼き物と言えばやはり「美濃焼」。
その素朴さと洗練が同居する表情は、日々の食卓にさりげない彩りを添えてくれます。
本記事では、岐阜の焼きものが育んできた伝統や魅力、そして現代のライフスタイルに溶け込む選び方までを紹介します。
岐阜の焼きもの「美濃焼」とは?

美濃焼は、岐阜県の東濃地域にあたる多治見・土岐・瑞浪・可児を中心に作られる陶磁器の総称です。
このエリアは古くから良質な粘土に恵まれ、日本屈指の陶磁器生産地として発展してきました。
美濃焼が特に大きく花開いたのは、茶の湯文化が隆盛した桃山時代です。
緋色が味わい深い「志野焼」や鮮やかな緑色の「織部焼」が誕生し、その独創性と美しさは今でも世界の陶芸ファンを魅了し続けています。
バリエーションが豊富
また美濃焼の最大の魅力は、その特徴をひとことで言い切れないところ。
白釉、緑釉、鉄絵、飴釉、黒釉と、色も形も装飾も幅広く、なんでも美濃焼で揃う、と言われるほどにバリエーションが豊富です。
昔ながらのやわらかな風合いも、カフェ食器として洗練されたデザインも、どちらも「美濃焼」。
その懐の深さが多くの人を惹きつけています。
また、美濃焼を手がける窯元も数多くあり、それぞれの個性的な作風が楽しめます。
おすすめの窯元や作家さんを知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。


次に、美濃焼に見られる主な4つの様式について紹介していきます。
美濃焼を彩る4つの個性〜志野・織部・黄瀬戸・瀬戸黒

美濃焼を象徴する「志野」「織部」「黄瀬戸」「瀬戸黒」の4つの様式は、それぞれ個性的で、色も感触もまったく異なった魅力があります。
特徴をまとめてみましょう。
| 様式名 | 画像 | 主な産地 | 特徴・魅力 | おすすめの用途 |
|---|---|---|---|---|
| 志野焼 | ![]() | 多治見・土岐 | やわらかさのある白釉。 火色・貫入の景色が美しい。 | 茶碗・煮物皿・マグ |
| 織部焼 | ![]() | 土岐・可児 | 鮮やかな緑釉。 大胆でモダン。 | 前菜皿・パスタ皿 |
| 黄瀬戸 | ![]() | 瑞浪・土岐 | 飴色の上品な光沢。 和洋どちらにも◎。 | 小皿・デザート皿 |
| 瀬戸黒 | ![]() | 多治見・土岐 | 黒釉の深い艶。 料理が映える存在感。 | 天ぷら皿・酒器 |
「志野」は、雪のようにやわらかな白に、炎で生まれた緋色(ひいろ)がほんのり浮かぶ様子がなんとも味わい深い様式です。
緑色の「織部」は大胆な造形と自由なデザインが特徴的で、テーブルに個性を演出することができます。
また「黄瀬戸」は落ち着いた飴色が優しく上品な雰囲気があり「瀬戸黒」の漆黒は和食にも洋食にも凛とした美しさを添えてくれます。
同じ窯で焼いてもひとつとして同じものがなく、作り手も使い手も様々な表情を楽しめることこそが美濃焼が愛される理由です。

岐阜の焼きものの選び方

美濃焼は多種多様なデザインがあるため、うつわ選びが楽しくなる焼きものです。
ここでは、初心者でも迷わず選べるコツをしっかり押さえておきましょう。
選び方のポイントは以下のとおりです。
- シーンをイメージして選ぶ
- 料理との相性を楽しむ
- 手ざわり・釉薬の質感を味わう
- 作家もの×量産品のバランス
それぞれ具体的に見ていきましょう。
1. シーンをイメージして選ぶ
朝食のパン皿、夜の煮物皿、休日のティータイムなど、使うシーンを想像すると、欲しいうつわのサイズや形が自然と決まります。
いつ使いたいかを軸にすると、自分に合ったうつわを無理なく選ぶことができますよ。
シーン・用途を具体的にイメージして選びましょう。
2. 料理との相性を楽しむ
料理と相性の良いうつわは、その料理の美しさをより引き立ててくれます。
たとえば、志野の白は煮物や和食に馴染み、織部の緑はパスタにもサラダにも映えます。
さらに、黄瀬戸は優しい色合いで、甘味や焼き菓子とも相性抜群です。
盛り付ける料理をイメージして、相性のよさを考えながら選びましょう。

3. 手ざわり・釉薬の質感を味わう
マットな質感、つるんとした光沢、釉だまりの濃淡など、触ったときの質感は、うつわを選ぶうえでとても大切です。
気に入った手ざわりのうつわは、つい手に取ってしまうものです。
特に、茶碗や湯呑など持ち上げて口に運ぶようなうつわは、長く愛用するためにもしっくり馴染む心地のよいものを選びましょう。
4. 作家もの×量産品のバランス
美濃焼にはざっくりと使える量産品もあれば、やや繊細に扱いたい作家さんの作品もあり、シーンに応じて使い分けることが大切です。
日常使いは丈夫で扱いやすい量産品、特別な日やご褒美には作家ものを、というように使い方を工夫することで、それぞれのシーンをより豊かに彩ることができます。
美濃焼はどちらも豊富なので、組み合わせる楽しさも味わえます。

美濃焼の産地を楽しむ!陶器市で出会う一期一会

美濃焼の魅力をさらに深く味わいたいなら、産地を訪れるのがいちばんです。
まちを歩くと、工房の煙突やギャラリー、作家のアトリエが点在し、うつわが生まれる空気そのものに出会えます。
ここでは主に「多治見・土岐・瑞浪」地区の見どころや、春と秋に開催される「陶器市」について簡単に紹介します。
多治見・土岐・瑞浪を散策する

多治見の「美濃焼ミュージアム」では、志野や織部の名品がじっくり鑑賞できます。
すぐ隣のカフェでは、美濃焼の器に盛られた季節のデザートが提供され、うつわを使う楽しさをその場で体感できるのも魅力。
また、土岐の「織部ヒルズ」には窯元のショップが並び、週末には作家市や陶芸体験が開かれ、うつわとの距離がぐっと縮まります。
さらに、瑞浪には静かな工房が点在し、じっくりうつわと向き合いたい人にぴったりの場所です。
陶器市で体験するうつわとの一期一会

春と秋は、うつわ好きが心待ちにする陶器市の季節です。
美濃焼には主に次のようなイベントが毎年開催されています。
● 土岐美濃焼まつり(5月3日〜5日)
織部ヒルズ一帯がにぎわい、掘り出し物や一点物との出会いが楽しめます。
● たじみ陶器まつり(10月中旬)
多治見の問屋街が会場となり、アウトレット品や業務用皿までラインナップが幅広い。
どちらも宝探しのような気分が味わえるイベントで、手に取った瞬間のときめきや、うつわとの一期一会が楽しめます。
普段は出会えないうつわにも出会えるため、毎年訪れるファンも多い人気イベントです。
岐阜の焼きものに関するよくある質問
美濃焼に関するよくある質問とそれに対する回答をまとめてみました。
美濃焼をこれから手にとってみようと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
- 美濃焼は普段遣いに向いていますか?
-
はい、日常使いにぴったりです。
美濃焼は丈夫なうつわが多く、電子レンジ対応のものや食洗機OKのものも増えています。
釉薬の風合いを楽しむうつわでも、普段の食卓で気兼ねなく使えるのが魅力です。
むしろ、毎日の料理にそっと馴染んでくれる使い心地の良さが、美濃焼の人気を支えています。
- 美濃焼は、陶器と磁器どちらが多いですか?
-
美濃焼は陶器が中心ですが、磁器を作る窯元もあります。
陶器はあたたかい質感が魅力で、磁器は薄くて軽いものが多く、普段使いにも向いています。
購入時には陶器か磁器かの表記をチェックしておきましょう。
- 美濃焼は電子レンジやオーブンで使えますか?
-
窯元やシリーズによって異なります。
電子レンジOKのうつわは多いですが、オーブンは非対応が多いです。
特に貫入(ひび模様)のあるうつわは急激な温度変化に弱いため、加熱OKのマークがあるか事前に確認するのがおすすめです。
- 美濃焼と瀬戸焼の違いは何ですか?
-
隣接する地域で歴史も深く似ていますが、特徴は少し異なります。
- 美濃焼…多彩な様式が強み。志野・織部・黄瀬戸など個性が幅広い。
- 瀬戸焼…磁器や白いうつわも多く、日用品としての機能性が高い。
「個性なら美濃、実用性なら瀬戸」という選び方もあります。
岐阜の焼きもので日常に彩りを添えましょう!

岐阜の焼きもの、美濃焼についてその魅力や様式、見どころなどを紹介してきました。
本記事のポイントをまとめると以下のとおりです。
- 美濃焼は岐阜・東濃エリアで作られる日本最大級の焼きもの
- 志野・織部・黄瀬戸・瀬戸黒の4様式が象徴する多様性が魅力
- 日常使いしやすく料理との相性や手ざわりで選びやすい
- 産地ではミュージアムや工房巡り、織部ヒルズでの体験が楽しめる
- 春・秋の陶器市では掘り出し物や一点物に出会える
- お気に入りの一枚が日々の食卓をやさしく彩ってくれる
美濃焼のうつわは、日々の食卓をさりげなく豊かにしてくれます。
お気に入りの1枚があるだけで、普段のごはんが少し特別になるから不思議です。
ぜひ、白・緑・飴色・黒と美濃焼の4つの色を食卓に並べて、毎日の食卓を豊かに彩ってみませんか?
美濃焼のおすすめのうつわが知りたい方は以下の記事も参考にしてください。


















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